パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「おはよう、かやちゃん。
もう大丈夫なの?」

出勤したら若手男性社員が親しげに寄ってきた。

……もしかしたら、彼かもしれない。

つい、そう思って警戒してしまう。

「はい。
一日休んだらもうすっかり。
ご心配おかけして、申し訳ありませんでした」

努めて明るく笑い、普通を装う。
でも、心臓はばくばくと速く鼓動していた。

「別にいいんだよ。
無理しないでね」

「ありがとうございます」

そのタイミングで時計がブルブル、ブルブルと二度震えた。
一拍おいて、さらに二度。
異常感値のサインだ。

「えっと……」

教えられたとおり、サイドにあるボタンを二度押す。
これで、なんでもないよと駒木さんに通知が行くらしい。
会議で緊張して通知が行き、駒木さんが駆けつけるとかなったらダメだもんね。
だから、そういうときはこの機能を使ってねって、言われた。
それはそうだ。

一日休んだ分、溜まっている仕事をこなしていく。
男性が目に入るたび、犯人ではないのかと疑心暗鬼になってしまう。
目深に被ったフードとマスクで、顔はわからなかった。
唯一覚えているのは、声だけだ。
それも、それだけで判断できる自信はない。

「あらぁ、篠永さん。
もう身体はいいのぉ?」

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