パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
森田さんが私の隣に立ち、にたりと笑う。

「はい、おかげさまですっかり。
すみません、昨日はお休みをいただいて」

「ほんとよぅ、すごーく忙しかったんだからねぇ」

これ見よがしに彼女が、はぁっとため息をついてみせる。

「だからこれ、お、ね、が、い」

わざとらしく一音ずつ区切り、彼女はどさっとファイルの束を置いた。

「わかり……ました……」

だからの意味がまったくわからないが、仕方ない。
引き受けないとさらに機嫌が悪くなるし。
……でも。

無言で彼女を見上げる。
私がコンペのアイディアを人から盗んだと聞いたと言っていたらしいし、彼女なら犯人を知っている?

「なぁに、私の顔になにかついてるの?」

あまりにじっと見つめていたせいで、彼女が不機嫌になっていく。

「すみません、お綺麗だなって思っただけで」

「なにそれ、嫌味!?
じゃあよろしく!」

書類の束をバン!と思いっきり叩き、彼女はプリプリ怒って去っていった。

……いや、嫌味ってわけでは。
けっこう整った顔をしていたし、昔ながらの野暮ったい化粧を似合うものに変えたら、それなりに男性からモテると思うんだけどな……。
しかし私には、それを彼女に伝える術がないのだ。

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