パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
にたりとイヤラシく、彼女の目が歪む。
その顔を見て惨めになっていった。

「……いえ。
大丈夫、です」

視線を机の上に落とし、ぽつりと呟くように返事をする。
たまたま今まで、その仕事が私に回ってこなかっただけ。
なのに、なんでこんなふうに言われなきゃいけないんだろう。

「じゃあ、お願いねー」

私を屈服させて満足したのか、彼女は愉しそうに去っていった。
ひとりになり、マニュアルを探す。
今日は残業確定だ。

とりあえず他の仕事を最速で終わらせ、作業に取りかかる。
四苦八苦してやっているうちに終業時間になり、部内の人があっという間に少なくなった。
データ抽出まではなんとかできた。
しかし問題は、アンケートのまとめだ。

「かやちゃん、残業ー?」

親しげに私を呼んで近づいてきた、私よりも少し年上の男性社員の西谷さん(にしたに)は、あくまでもただの同僚だ。
ただ、よく食事に誘ってくるので、それはのらりくらりとかわしている。

「ええ、はい。
そうでーす」

言外に話しかけるなという笑顔で、彼を見上げる。

「手伝おうかー?」

けれどそれは効いていないようで、彼はさらに話しかけてきた。

「いえ、……」

断りかけて、止まる。
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