パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
そのおかげで少しずつ、落ち着いていった。

「だ、大丈夫、……です」

証明するように、彼の背中をぽんぽんと叩く。
それでようやく安心したのか、彼は離れてくれた。

「ごめんね、また遅くなって。
警備員がなかなか入れてくれないからさ……」

駒木さんの視線が、あとから来た警備員のおじさんに向く。

「なにがあった?」

「なにもないです、なにも。
エレベーターで男性とふたりっきりになって、私が過剰に反応しちゃっただけで」

笑ってみせたものの、彼の不安は晴れない。
彼を呼びだす羽目になったのはそれだけだが、……でも、さっきのは?

「とりあえず、家に帰ろう。
そのほうが安心できるだろ?」

「そう、ですね」

駒木さんの支えで、立ち上がる。
足の震えは治まっていた。

「ほら、なんでもなかったじゃないですか。
……ひぃっ」

警備員はブツブツ言っていたが、駒木さんから冷たい視線を送られ、小さく悲鳴を上げた。

「なにかあってからじゃ遅いんだ。
そのための警備だろ」

「す、すみません!」

怯えたように警備員はビシッと姿勢を正し、少し可哀想だった。

駒木さんの運転で彼の家に帰る。

「晩ごはんはどうしようか。
外で食べるのはあれだよね……」

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