パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
さっき、私の様子がおかしかったからか、彼は悩んでいるようだった。

「なにか出前を取ろうか。
それでいい?」

「はい」

異存はなかったので頷いた。

帰り着いて出前を頼む。
なにが食べたいか聞かれたが、さっきのあれで食欲はあまりない。
迷っていたら、最近気に入っているという洋食屋を勧めてくれた。
それでもどうしようかと悩む。

「じゃあ、僕が適当に決めちゃうね。
花夜乃さんは食べたいのを食べたいだけ食べたらいいよ」

そう言って、駒木さんが頼んでくれた。
こんなふうに気遣いのできる駒木さんって、凄いな。
私も、こうなりたい。

「それで。
なにがあったの」

出前を待つあいだ、ソファーで私の隣に座り、駒木さんがじっと見つめてくる。
話してもいいんだろうか。
でも、私の勘違いかもしれない。
少し考えたあと、おそるおそる口を開いた。

「エレベーターで一緒になった男性社員とすれ違うとき、『またね、花夜乃ちゃん』って言われて、小さく笑われた……気が、しました」

聞き逃すほどの声だったし、気のせいかもしれない。
けれど、ゾッとするほど愉悦を含んだ声だった。

「その男に心当たりは?」

「心当たり……」

そういえば私の部署に、あんな男性はいただろうか。
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