パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
思い起こすが、該当する男性の顔は出てこなかった。
私がわからないと首を振り、駒木さんは軽く握った手を口もとに当て、なにか考え込んでいる。

「花夜乃さん、やっぱり少しのあいだ、会社、休まない?」

顔を上げた彼は、困っているように見えた。
駒木さんが私を守ってくれようとしているのはわかっている。
そのために、彼の指示に従ったほうがいいのも。
それでも、私は。

「コンペのプレゼン、来週なんです。
それまでは休めません」

レンズ越しに真っ直ぐ、駒木さんと視線をあわせる。
しばらくじっと見つめあったあと、彼はふっと表情を緩ませた。

「わかった。
僕のほうでなにかできないか、考えるよ」

「ありがとうございます」

精一杯の気持ちで頭を下げる。
本音をいえばきっと、彼は絶対に私を休ませたいのだろう。
でも、私のやりたいことを優先してくれた。
そういうところは、好きだと思う。

届いた料理で遅い夕食を済ませる。
料理は少しずつ、シェアしてもらった。

「そういえばどうやって、会社の中に入ったんですか?」

部外者は立ち入り禁止だから、警備員は駒木さんを中に入れなかった。
彼は文句を言っていたが、警備員は職務をまっとうしただけだ。

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