パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「お仕事クビになるなんて、ダメです。
自分の意思で辞めるならとにかく」

「わーい、花夜乃さんが心配してくれたー」

けっこう深刻な問題だと思うのに、駒木さんはゆるゆる笑っている。
そういえば駒木さんが警察官をしているのは警視庁の七不思議のひとつだとかまで東本くんが言っていたし、この仕事にそこまで執着していないんだろうか。

「そりゃ、ただ警察をクビになるのは嫌だけど、花夜乃さんのためなら別。
花夜乃さんのためだったら、僕は犯罪者にだってなる」

じっと眼鏡の奥から私を見つめる目は、少しも揺るがない。
その澄んだ綺麗な瞳に耐えられなくなって、すっと視線を逸らした。

「……犯罪者は、ダメです」

「僕はそれくらい、花夜乃さんを愛してるってことだよ。
覚えておいて」

ふふっと小さく、彼がからかうように笑い、なぜか詰めていた息をついた。
私のためなら犯罪者になるなんて、愛が重すぎる。
でも、そこまで思われるなんて、私は……。

「てかですよ、来るなら来るで朝、言ってくださいよ」

今朝、迎えに来た東本くんと三人で普通にモーニングを食べ、昨日と同じくタクシーに乗せられて別れた。
あのときは駒木さんも東本くんも、なにも言っていなかったのだ。

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