パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
このままだと下手したら、終電に間に合わないかもしれない。
それに、手に負えない量の仕事を手伝ってもらうのは、正当な理由では?
そろりと部内を見渡して他に女性社員が残っていないか確認し、口を開く。

「お願い、できますか?」

「いいよ、データ半分、こっちに送りな」

珍しく私に頼られたのが嬉しいのか、西谷さんの顔がぱーっと輝いた。

手伝いがあったおかげで、思いの外仕事は速く片付いた。

「ありがとうございました、助かりました」

「かやちゃんの役に立てたんならいいよ」

彼は嬉しそうににこにこ笑いながら、私の次の言葉を待っているように見えた。

「えっと……」

「うん?」

期待を込めた目で彼が私を見る。
なにを期待されているのかはわかるが、それはできるだけ避けたい。
避けたいが、仕事を手伝ってもらっておいて、なにもしないなんて社会人として許されないわけで。

「お礼に食事して帰りませんか」

せめて、後日の約束だけは避け、今日中に終わらせたい。

「いいよー」

一瞬考えたあと、軽い返事で彼は立ち上がった。

会社を出て、周囲をきょろきょろと見渡す。

……さすがに今日はいないか。

「なにやってんの?」

私の行動が不審だったのか、西谷さんは怪訝そうに聞いてきた。

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