パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
男性社員はどんなに誘っても首を縦に振らなかった私が、ぽっと出の駒木さんとランチに行ったりしたからだろう。

「花夜乃さん」

駒木さんが呼び止めるので、席に向かいかけていた足を止めた。

「ゴミ、ついてる」

膝を折って顔を近づけ、彼の手が私の髪に触れる。

「取れた」

眼鏡の奥で目を細め、駒木さんはにっこりと微笑んで離れた。

「あ、ありが、……とう」

顔が熱い。
とくんとくんと心臓が甘く鼓動し、駒木さんへ通知が行かないか心配になる。

「じゃあ、午後からもお仕事、頑張ろうね」

ふふっと小さく笑い、ようやく彼は自分の席へと向かっていった。
私も自分の席の椅子に、気が抜けたかのように座る。
さっきの駒木さん、いつもより甘かった……ううん。
わざとらしかったのだ。
いつもだって私に甘いのは甘いが、あれはみんなにわざと見せつけているかのようだった。
なんであんなこと、したんだろう。
逆効果じゃない?
現に。

「……篠永さん、駒木さんとどういう関係?」

「……ムカつく、篠永さんばっかり」

「……けっ、顔がよければいいのかよ」

さっきからこれ見よがしに聞こえる、妬み僻みの声が凄い。
これじゃあ、犯人の感情を逆撫でしているだけだと思うんだけれどな。

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