パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
駒木さんはカップを掴んで席を再び立ち、彼女たちとたぶん休憩コーナーへ向かっていた。

……え、なんで?
だったら私へのあの、求愛行動はなんだったの?

なんだかムカムカしながらキーを叩く。

……ミスターパーフェクトで笑わないとか東本くんは言ってたけど、嘘じゃない?
さっき、女性たちににこやかに笑ってたもん。
ムカつく、あー、ムカつく。

……ってこれじゃまるで私、ヤキモチを妬いているみたいだ。

すっかり冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干し、空になったカップを洗いに立つ。
もう戻ってきていた駒木さんが腰を浮かしかけたのが見えたので、視線で座ってろって脅した。

「……はぁっ」

給湯室でひとりになり、ため息が漏れる。
お試し期間とか駒木さんを試すようなことをしておいて、ヤキモチを妬くとか何様だよね。

「……ダメだな、私」

シンクの縁に手を置き、もう一度ため息をついた。
憂鬱な気分を流すように、勢いよく水を出す。
カップを洗っていたら男性のものと思われる足音が聞こえてきて、手が止まった。
無意識に胸のコインを掴む。

「かやちゃん、お疲れ」

入ってきた、私より少し年上の男性社員は私の後ろを通り、奥にあるコーヒーマシーンの前に立った。

「お、お疲れ様、……です」

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