パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
まだ、男性社員とふたりになるのは警戒してしまう。
それに、犯人かもしれない。
今すぐ逃げたいが、泡だらけのカップを放っていくのは、不自然だ。
駒木さんを呼ぶべき?
でも、どうやって?

「ねえ。
あの駒木ってヤツと、どういう関係?
随分親しげだけど」

彼はカップを見つめたままこちらを見ない。
私もじっとコインを握りしめ、俯いて硬くなっていた。
人はたくさんいるはずなのに、喧噪があんなにも遠い。
ここではカップに注がれるコーヒーのコポコポという音と、蛇口から勢いよく出る水の音だけが響いていた。

「あっ、えっと。
知り合い、で」

正確な関係は答えられず、嘘ではないが適当な関係を言う。

「それにしてはかやちゃんに馴れ馴れしくない?
アイツ」

彼の声には憎しみがこもっているように感じた。
こちらを向いた彼が、一歩私へ距離を詰める。
コインを握る手に、ぎゅっと力が入った。

「えっ、そう、かな……?」

「かやちゃんも、まんざらじゃないみたいだしさ」

さらに近づいてきた彼に肩を強く押され、身体がよろける。

「おっと」

倒れそうになったところで誰かに後ろから支えられ、見上げていた。
眼鏡越しに目のあった駒木さんがにこっと笑う。
それで、身体から力を抜いた。

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