パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「なにをやってるんですか」

駒木さんの声で、給湯室の温度が氷点下にまで下がった気がした。
それくらい、彼の声は冷たかったのだ。

「な、なにって、ちょっと喋ってただけだけど?」

説明しながらも男性社員の目は忙しなくあちこち向いている。

「花夜乃さん、本当?」

じっと上から、駒木さんが私を見つめる。
どう話していいのか悩んでいたら、彼の目が正直に言っていいんだよと語りかけてきた。

「本当」

私の言葉で、嬉しそうに男性社員の顔が上がる。

「でも、肩を押されて怖かった……です」

「そう」

私の肩を慰めるように軽くぽんぽんと叩き、駒木さんは男性社員と向き直った。

「これはもう、傷害……いや、婦女暴行で立件できますが」

「婦女暴行!?
なに言ってるんだよ!」

男性社員の手がこちらに向かってきて、思わず目を閉じる。

「私への傷害罪も追加されたいんですか」

「くっ」

男性社員の苦しそうな声が聞こえ、目を開けた。
駒木さんが身体の位置を変えて私を庇い、男性社員の手首をギリギリと自分の手で締め上げている。

「は、離せ!」

「私の質問に答えてくれたら、離しますよ。
……火曜日、何時に会社を出てなにをしたか、話せ?」

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