パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
駒木さんの声は、地の底から響いてきたかのように低かった。
男性社員もそのせいで、縮み上がっている。

「か、火曜は一時間残業して、近くの居酒屋で飲んで帰った」

「証明する人間は？」

「残業してたのは、そこの篠永が知ってる！
一緒に会社出たから飲みに誘ったけど、断られたから！」

勢いよく首を縦に振り、こちらを見た駒木さんに返事をする。

「わかった」

「あっ」

駒木さんが手を離し、男性社員は手首が痛むのかさすっていた。

「お前ではないようだから、今日は見逃してやる。
……ただし」

足を踏み出し、駒木さんが男性社員に肉薄する。
長身の駒木さんに見下ろされ、彼は若干仰け反っていた。

「二度と、花夜乃さんに近づくな。
この、……ゲスが」

「ひぃっ。
ご、ごめんなさい……！」

駒木さんが吐き捨てるように言った途端、男性社員は小さく悲鳴を上げ、私を押しのけて転がるように去っていった。

「えっと……」

「よかった、今度は花夜乃さんのピンチに間に合って」

振り返った駒木さんが、私を抱き締めてくる。

「助けてくれて、ありがとうございます」

彼が来てくれなかったらあのあと、どうなっていたんだろう？
激昂したあの男性社員に殴られたりしていたんだろうか。
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