パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
想像したら一気に怖くなってきた。

「大丈夫、怪我とかしてない？」

確認するかのように、彼の手がぱたぱたと私の全身を軽く叩いていく。

「大丈夫ですよ、ちょっと肩を押されただけですから」

「酷いよね、女の子にあんなことするなんて。
捕まえてやりたいけど、今は警察官じゃなくて派遣の駒木さんだからね」

眼鏡の下で眉を寄せ、困ったように彼が笑う。
それで完全に、日常が戻ってきていた。

「そうですね。
ほら、そろそろ戻らないと、給湯室でサボってるーとか言われちゃいます」

「そうだね、あんまり目立つ行動もできないしね」

駒木さんに先に戻ってもらい、私も洗いかけのカップを洗ってしまって席に戻る。
給湯室は少し離れているので、さっきの騒ぎは誰も気づいていないようで安心した。

「篠永さぁーん」

いつもの声が聞こえてきて、キーを打っていた手を止める。

「これ、お、ね、が、い」

「……はい」

もう、反論するのも面倒なので、差し出されたファイルを受け取った。
それに押しつけられた分を私がやらなければ森田さんの仕事が回らないので、全体の業務が滞る。
言っておくが彼女の仕事が特別多いわけでもなく、彼女の処理能力が遅いわけではない……と、思う。
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