パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「へぇー。
抱きあっていたのに?」

「抱きあって……」

……いましたね、確かに。

「ちょっと私が涙目になっていたので、慰めてくれたんですよ。
駒木さん、優しいから。
きっと私じゃなくあなただったとしても、駒木さんは一緒のことをしていたと思いますよ」

ちらっと彼を見たら、軽く頬を膨らませてもの凄く不機嫌そうな顔をしていた。
でも、このまま会社でイチャついていたとか噂を立てられたら、マズいでしょ?

「ふぅん、そう。
駒木さんって優しいんだぁ」

「はい、凄く優しい方です」

にこにこ笑って念押しし、それで押し通した。

「ごめんねぇ、変なこと言って。
じゃあ、よろしくー。
……そっか、駒木さんて優しいんだぁ……」

珍しく上機嫌で、彼女が遠ざかっていく。
なんかブツブツ言っていたのは気になるが。
それにさっきから滅茶苦茶不満顔で駒木さんがこっちを見ているし、なんか恨まれそう……。

会社規定の定時で私の仕事が終わるはずがなく。

「花夜乃さん、残業?」

「あー、そうですね……」

私の隣に立ち、駒木さんは聞いてきた。

「先、帰ってていいですよ。
派遣さんは残業、なるだけしないように、ですもんね」

回りに聞こえないように、こそこそと話す。
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