パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「あっ、なんでもないです」

それに、慌てて笑って誤魔化した。
時刻はすでに十時を過ぎている。
そう、何時間も待ったりはしないのだろう。
それとも、もしかしたら昨日の私の態度に嫌気がさして、やめたとか?
だったら、いいのに。

「そーいや、変な男につきまとわれてるんだって?」

歩き出した私に、すぐに彼が着いてくる。

「あー、そーですね……」

「オレでよかったら相談に乗るよ?」

「ありがとうございます。
でも、大丈夫なので」

なにが大丈夫なのかまったくわからないが、とりあえずやんわりと断った。
そうじゃないと彼が第二のあの男になりかねない。

遅くまでやっている居酒屋で食事をする。

「かやちゃんは飲まないの?」

「あー、まだ明日は仕事なんで……」

適当な笑顔を貼り付け、ウーロン茶を口に運ぶ。
食事を後日に持ち越さず、無理矢理でも今日にした理由。
明日は仕事だからとお酒を断れるからだ。
まさかそこまで……とは思うが、酔わせてどうこうは警戒しなければならない。

「かやちゃんってほんと、可愛いよねー」

締まらない顔で彼が、へらへらと笑う。

「ありがとうございます」

「オレ、かやちゃんみたいな子、めっちゃタイプー」

「そーですか」

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