パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
残念そうに駒木さんがため息をつく。

「なにがあったんですか」

心配そうに東本くんは、こめかみに皺を寄せた。

「花夜乃さんに『淫乱』なんて、最低な言葉を投げつけたんだ」

悔しそうに駒木さんが顔を歪ませる。

「なんですか、それ。
早く犯人捕まえて、極刑にしましょう」

東本くんは東本くんで怒っている。

「てか、なんで犯人逃がすんですか、あなたは」

「それは……すまない」

俯いた駒木さんは、酷く後悔しているようだった。

「し、仕方ないよ!
だって駒木さんは動けなくなった私についててくれて、気遣ってくれてたから……!」

あのとき駒木さんがいてくれなかったら、私はパニックになっていたかもしれない。
でも、彼がいてくれたからすぐに落ち着けた。
そのせいで犯人が逃げたとしても、私には彼を責める気などない。
反対に感謝したいくらいだ。

それにあのとき、エレベータは満員だったし、すぐにみんないなくなった。
あの中から声の主を探すなんて無理だ。

「……なら、仕方ないです」

東本くんの声が悔しそうなのは、なんでだろう?

「でも、候補は絞れた」

手帳を開き、駒木さんが万年筆で五名の名前を書く。

「あのとき、エレベータに乗っていた、同じ部署の男性職員だ」

え?
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