パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
作り笑顔のまま、彼の話を聞き流した。
タイプとか言われても全然嬉しくない。
彼らが好きなのは私の顔であって、性格や仕事ではないのだ。
あとは、小柄なのでいざとなれば力で言うことをきかせやすいというのもあるかも。

「そろそろ帰りませんか。
終電なくなりますし」

「そーだねー」

彼は笑顔だったが、目の奥はまったく笑っていなかった。

「オレはもうちょっと、飲みたいかも」

試すように彼が私の顔をうかがう。
そのイヤラシい視線に背筋が粟立ったが、努めて平気なフリをした。

「私は終電あるうちに帰りたい、ので。
ごめんなさい。
会計、しておきますね」

伝票を掴み、鞄を持って立ち上がる。
彼はそれ以上、追ってこなくて助かった。

「……はぁーっ」

駅に向かいながら、ため息が漏れる。
どうして下心ありの男ばかり、私に寄ってくるんだろう。
いっそ、整形しようかとすら考えた。



翌日の午後、課長に呼ばれて彼の前に立つ。
父ほどの年の彼は優しいがなんでもなあなあで終わらせてしまい、私が他の女性社員から嫌がらせを受けていても見て見ぬ振りで、苦手だった。

「このアンケートのまとめ、篠永さんがやってくれたんだって?」

「はい」

なにか不備があったんだろうかと、その先の言葉を待つ。

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