パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「あそこの雑貨屋さんに連れていってもらっていいですか」

街中ホームセンター的な立ち位置の、大手雑貨チェーン店を指定した。
あそこなら、大抵のものが揃う。

「わかったよ」

反対されず、素直に頷いてくれてほっとした。

「そうだ。
帰りでいいのでマンションに寄ってもらえませんか?」

「いいけど。
どうしてだい?」

不思議そうに駒木さんの首が傾く。

「服を少し、取りに行きたいんですが」

「服?
……ああ!」

私の姿を改めて確認し、彼はぱっと顔を上げた。

「取りに行かなくても買ってあげるから、心配しなくていいよ」

「えっとー……」

目尻を下げ、満面の笑みの駒木さんの、圧が凄い。

「……ありがとうございます」

じっとキラキラした目で見つめられ続け、結局、断れなかった。

フレンチのお店から雑貨店までは徒歩で移動する。
隣を歩く駒木さんからさりげなく手を繋がれ、つい顔を見上げていた。

「ダメかい?」

眼鏡の奥から彼が、少しだけ自信なさげに私を見ている。

「いいですよ」

笑って私も、その手を握りなおした。

「花夜乃さんが僕と手を繋いでくれた!」

上機嫌になっているのか、楽しそうに繋いだ手が揺れる。
そのせいか、私も楽しくなっていた。

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