パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
途中でアクセサリーショップの前を通りかかり、駒木さんが足を止める。

「入らない?」

私の手を軽く引っ張り、彼は誘ってきた。

「そう、ですね……」

気に入る婚約指環を買いに行こうとか前に言われたし、駒木さんは隙あらば婚姻届を出してくるから、油断はできない。

「そんなに警戒しなくても、花夜乃さんに可愛いアクセサリーを買ってあげたいだけだよ」

きゅるんと眼鏡の向こうで目を潤ませ、悲しそうに見られたら、もー、ダメ。

「……いいですよ」

また、断り切れずに私は、承知してしまった。
甘いと思われるかも知れないが、あんな目で見られて断れる人間がいるなら会ってみたい。

入ったお店はプチプララインのアクセサリーショップのお店だったので、少し気が楽だ。
……いや、エンゲージリングやマリッジリングの取り扱いもあるので、気は抜けないが。

「僕はペアリングが欲しいんだけど」

思わずぎくりと足が止まる。
駒木さんの顔を見上げたが、彼はペアリングとは別の場所を見ていた。

「それは、花夜乃さんを本気にしてからだね。
それに、そのときはペアリングじゃなくてマリッジリングだし」

想像しているのか、へらっと崩れた顔で彼が嬉しそうに笑う。

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