パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
わざとらしく彼女がため息をついてみせ、固く握りしめたペットボトルがベコッと凹んだ。

「それに、なにもしなくても、実績ができるんだもの、羨ましいわぁ」

俯いて硬く唇を噛みしめた。
きっと彼女はさっき、私が課長に褒められた件を言っている。
手伝ってもらったのは事実だが、私は課長にその旨を報告した。
無視したのは課長だし……ううん。
聞いてもらえなくても、きちんと訂正しなかった私が悪い。
それでも、私だってなにもしなかったわけではない。
あれは私主導でまとめた。

「あー、もー、私なんていくら頑張っても評価してもらえないのに。
羨ましい、羨ましい」

忙しそうに彼女が去っていった方向には、書庫がある。
誰にも見つかっていないと思っているんだろうが、彼女があそこで仕事中にソシャゲをしているのは、有名な話だった。

「あーあ」

一気にミルクティを飲み干し、ペットボトルをゴミ箱に捨てる。
まったりして気分転換したかったのに、反対にムカムカする結果になってしまった。

残りの仕事をこなし、今日も一時間ほど残業して会社を出る。

「マイ・エンジェル!
僕と結婚しよう」

会社を出たところで一日ぶりにあの男が、いつもと同じ姿で花束を差し出してきた。

「……けっこうです」

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