パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
なんか段ボール箱の中にちょこんと座り、「拾って?」とうるうる潤んだ目で見てくる駒木わんこが思い浮かんでしまった。
それはそれですぐに拾ってしまいそうだ。

「んー、花夜乃さんは、その人の立場とか、バックボーンとかあまり気にしないでくれるかな、って僕は信じてる」

レンズの向こうから彼が、じっと私の目を見つめる。
その目は失望させないでと語っているようだった。

「……そうですね。
駒木さんが期待しているような人間に、なりたいです」

「いいお返事だね」

ぐいっとカップの中身を駒木さんが一気に飲み干す。

「そういう返事のできる花夜乃さん、僕は好きだよ」

ぷにっと人差し指で鼻を押し、私の顔をのぞき込んで駒木さんはふふっと笑った。

「……ありがとうございます」

熱い顔に気づかれないように、俯いて私もコーヒーを飲んでしまう。

「カップ、洗っておくから先に戻りなよ」

「えっ、でも」

断る私の手からカップを奪い、駒木さんは流しへ向いた。

「いいから、ほら」

「じゃ、じゃあ、よろしくお願いします」

ありがたく言葉に甘え、先に席に戻る。
さっき、派遣と結婚するのは負け組だと思われていそうなのが嫌だった。
だってそうじゃない?
結婚ってふたりでするものだ。
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