パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
ふたりで支えあっていけばいい。

……まあ、今はそれだけじゃやっていけないのも理解しているけれど。

「篠永さーん。
この仕事、お願いできる?」

「あっ、はい……」

にっこりと笑って森田さんが差し出すファイルを、戸惑いながら受け取った。

「あなたも、大変ねぇ。
じゃあ、よろしくお願い」

その後の嫌味を覚悟して待っていたが、それだけ言って彼女はどこかへ行ってしまった。

……え、なに?

なにが起こっているのか理解できない。
いつも、嫌味や妬みと共に、仕事を押しつけられていたのだ。
これじゃまるで、普通に仕事を頼まれたのと一緒なんだけれど?
ああ、あれか。
彼女の中で私は妬み嫉みの対象から、卑下する対象にシフトチェンジしたのか。
それでも、あの屈辱的な嫌味を聞かなくてよくなったのは、ラッキーだ。

今日は何事もなく、一日が終わろうとしていた。
駒木さんと結婚を前提にお付き合いしていると公表したのがよかったのだろうか。

「花夜乃さん、今日も残業だよね」

定時になり、私の席に来た駒木さんは苦笑いだ。

「僕がやっといてあげるから、花夜乃さんはコンペの準備しなよ」

今日もさっさと私の残っていた仕事を引き受け、駒木さんが席に戻っていく。
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