パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「関わる人には守秘義務があるし、配慮するように僕も言うよ。
それでも嫌かい?」

「……イヤ。
……絶対、イヤ」

私から出た声は、聞き取れないほどに掠れている。

「わかった。
じゃあ、言わない。
でも、警察には報告するよ?
きっと、同じ犯人だからね」

それには黙って、頷いた。

「花夜乃さん」

立ち上がった駒木さんが、私を包み込む。

「深呼吸、して」

ゆっくり後ろ頭を撫でられ、それにあわせて深呼吸を繰り返す。
大好きな彼の匂いを吸い込んで、気持ちは幾分か落ち着いた。

「僕がいるから、大丈夫。
僕が絶対に、花夜乃さんを守るから、安心していい」

「……うん」

私から身体を離し、彼が顔をのぞき込む。

「ほら、笑って?」

言われて、ぎこちないまでも笑顔を作った。

「花夜乃さんが帰らないって言ったんだからね?
頑張って」

そうだ、私が帰らないと決めた。
こんな卑怯な嫌がらせに、屈したくない。

「はい」

「それに、僕がいるから安心してていいからね」

同じような台詞を繰り返し、駒木さんが私の鼻を押す。
それで少し笑えたのは、僅かにだけれど気持ちが緩んだからだと思う。

駒木さんは引き出しの中身を全部処分し、さらに自分の引き出しと替えてくれた。

「気持ち悪いでしょ、やっぱり」

そういう気遣いが、嬉しい。
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