パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
今日は珍しく残業もなく終わり、プレゼン資料の見直しをした。

「大丈夫そう?」

少し心配そうに駒木さんが私の顔をのぞき込む。

「不備はないし、明日、当たって砕けるだけです!」

空元気でもいいので、明るい声を出した。
うん、こんな嫌がらせ、跳ね返してやるんだ。

「そういう花夜乃さん、好きだよ」

帰り支度をして会社を出る。
夕食は明日の英気を養わなきゃって、焼き肉に誘ってくれた。

「あー……。
食欲、なくて」

焼き肉なんて普段なら、行きたいに決まっている。
しかし、今日はあの嫌がらせと明日の緊張で、胃がきゅうきゅうと絞まっていた。

「でも、ちょっとでも食べないとダメだよ。
食べられそうなものはある?
おかゆ?
ゼリーとかプリンなら大丈夫そう?」

一気に、駒木さんの心配が最高潮になる。

「そう、ですね。
おかゆなら少しは」

「わかったよ」

そのまま帰り、中華がゆのお店に駒木さんは連れていってくれた。
それでも食べられるか不安だったけれど、生姜なんか薬膳が効いているからかほとんど食べられた。
それに。

「駒木さん、ありがとうございます」

「ん?
僕はなにもしてないよ」

駒木さんは笑っているが、嘘。
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