パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
俯いて硬く唇を噛みしめ、私は会議室をあとにした。

職場に戻る足が重い。
あんな思いまでして頑張ってきた私の努力はなんだったんだろう?
少しでも職場に戻る時間を延ばそうと、非常階段を使う。
職場のある階に着き、ため息をつきつつバックヤードからフロアに出ようとしたら、横から出てきた手に腕を引っ張られた。

「……えっ!?」

「……抵抗するな」

後ろから大きな手で口を塞がれ、低い声で命令される。
なにもできず、ただ棒立ちになった。

「こい」

そのまま男は、私をずるずると引きずるようにして連れていく。
備品倉庫まで来て、私を床に投げ捨てた。
中に入り、男は後ろ手で鍵をかけた。

「あれだけやっても諦めない、お前が悪いんだからな」

私に迫ってきたのは、残業帰りで遅くなった日、エレベータで一緒になったあの男だった。

男はネクタイを外し、私の手首を縛り上げた。
さらにハンカチを取り出し、口に詰めてくる。

「オレの成績が悪いのは、全部お前が横取りするからだ」

男が、私にのしかかってきた。
ガン!と思いっきり頭を床に打ち付けられ、くらくらする。

「んーっ、んーっ」

声を出そうとするが、口に詰められたハンカチのせいで、くぐもった音しか出てこなかった。
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