パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
魂まで凍りつきそうなほど冷たい、駒木さんの声。
きっと、これ以上ないほど怒っている。

「なにをしたのかって聞いてるんだ」

激昂するわけでもなく、静かに男へ彼は質問しているが、それが反対に恐怖を掻き立てた。

「なにって、教育だろ、教育。
男に媚売ってるような女には、教育が必要だろ?
あがぁっ!」

次の瞬間、ごきんとなにかが折れるような音がし、同時に男が悲鳴にもならない咆哮を上げる。

「キサマのせいで、花夜乃さんがどれだけ怖い思いをしたのか知っているのか?
あれからどれだけ怯えて暮らし、今だって無理して明るく振る舞っているのを、キサマは知らないだろ?」

駒木さんの声は淡々と、なんの抑揚も感情もなかった。

「同じ目に遭わせてやろうか」

眼鏡の奥から彼の視線が、床に転がっていたカッターナイフへと向かう。
ゆっくりとそれを拾い、駒木さんは大きく振りあげた。
それまではどこか別の世界のように見ていたが、それを見て急に、現実へ戻った。
カッターナイフが振り下ろされるのが、スローモーションのように見える。
ジタバタと暴れたら手の拘束が緩み、急いで口からハンカチを取り出した。

「ダメッ!」

私が大きな声を出し、男に突き刺さる寸前でカッターナイフがぴたりと止まる。

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