パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「……花夜乃さん?」

ようやく私に視線を向けた駒木さんは、あきらかに困惑している顔をしていた。

「どうして止めるの?
コイツには花夜乃さんと同じくらい、いや、それ以上の目に遭わせてやらないといけないだろ」

駒木さんの言い分はわかる。
私だって彼には、同じくらい怖い思いをしてほしい。
でも、それだと。

「駒木さんが犯罪者になったら、一緒にいられなくなるじゃないですか」

私のために、駒木さんが罪を犯すのがイヤだ。
それよりも私は、一緒にいてほしい。

「私は駒木さんと、ずっと一緒にいたいです。
だから、こんなヤツのために駒木さんが犯罪者になるのは嫌」

「花夜乃さん……」

彼の手からカッターナイフが落ちていく。
それは男の顔を掠め、顔に傷を作った。

「そうだね、花夜乃さんは僕が守るって誓ったんだもんね」

駒木さんは男から、離れようとしたものの。

「はっ。
愛は人を救うってか?
おかしくて笑いそうだぜ」

男が嘲笑した瞬間、駒木さんの拳が男の顔に叩き込まれた。

「花夜乃さんのおかげで拾った命、無駄にしたいのかな?」

拳を握りながら指をボキボキと鳴らし、駒木さんが彼に迫る。

「ひぃっ。
か、勘弁……!」

シャツを鼻血で染めながら、男はさすがに命乞いをした。

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