パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
男は会社からほど近い、高級焼き肉店に連れてきてくれた。
ちなみに私は、高すぎてこのお店には来たことがない。

「飲み物は?」

席に着くと同時にメニューを広げ、聞いてくれる。

「……ウーロン茶、で」

「わかった。
……ウーロン茶を二つ」

おしぼりを持ってきた店員に、さらりと彼は注文した。
そういうところは、手慣れているように見えた。
それに、飲まないところも少し、好感度が高い。

「なに、食べる?」

「うっ」

肉のメニューを開いてくれたけれど、〝時価〟とか書いてあるのが並んでいて、固まった。

「えっと……」

「遠慮はいらないよ」

遠慮はいらないとか言われても、時価の肉なんていくらするのか想像できなくて、気後れしてしまう。

「僕が適当に頼んでもいいかな」

私が戸惑っているのを察知したのか、彼が提案してくれる。

「……お願いします」

こういうところ、その辺の男性よりもスマートだ。

「そういえば、まだ名前も名乗ってなかったよね。
僕は駒木(こまき)鷹郁(たかふみ)といいます。
二十八歳、公務員です」

頼んだものが出てくるまでのあいだ、彼が改まって自己紹介をしてくれた。
< 18 / 219 >

この作品をシェア

pagetop