パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「花夜乃さん、怪我はない?」

傍に来てくれ、駒木さんが私の全身を確認する。

「大丈夫です。
それより……」

すっかり戦意喪失し、茫然自失になって座り込んでいる男へと目を向ける。

「あんなヤツ、放っておけばいい。
……と。
逃げられたら困るから、拘束しておかないとね」

近づいた駒木さんを、男は完全に怯えた目で見ていた。

「手錠はないから……これでいいか」

さっきまで私を縛っていた男のネクタイを拾い、男の後ろに駒木さんがしゃがむ。

「ぎゃーっ!」

駒木さんが男の手を後ろ手にした瞬間、男が大きな悲鳴を上げた。

「駒木さん。
それ、腕、折れてるんじゃ……」

そんな音がしていた。
だから、動かされるだけで激痛なのでは。

「折れてないよ、外しただけ。
折ればよかったって後悔はしてる」

手際よく男の手首を縛り、駒木さんが立ち上がる。
彼はいたって真面目だが、その後悔はしないでいただきたい。

駒木さんは東本くんに連絡し、所轄から誰か寄越してくれと命令していた。

「でも、いきなり警察が来たら、会社は困るのでは……?」

もうすでにこれは事件なので、警察案件なのはわかる。
今後のために、会社に知られたくない……は、もう無理か。
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