パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「盗んだ!
オレの頭の中から!」

「……は?」

思わず、変な声が出た。
頭の中から盗むとはいったい?

「いつかオレが提案しようと考えていたアイディアを、篠永が盗んだんだ!」

「それは、どこかに発表したり、人に見せたりしましたか?」

それなら、どこかで私も見た可能性があるかもしれない。
しかし、彼の返事はとんでもなかった。

「いや?
オレの頭の中にしかないが?」

さもそれが当たり前といったふうに櫻井さんが言う。
もう、私の理解を超えていて、どうしていいのかわからない。

「花夜乃さん、真面目に考えるだけ無駄だよ」

慰めるように駒木さんが私の肩をぽんぽんと叩く。

「こんなヤツに恨まれるなんて運がなかったと思うしかないけど、それでも腹は立つな。
もう一発、殴っとくか」

「えっ、それはやめてください!」

本気で駒木さんは殴りそうで、慌てて止めた。

そのうち人事部長と警察官が一緒にやってきた。
制服警官でないのは、大事にしたくない会社の意向だろう。
櫻井さんは警察に連れていかれ、私も事情聴取で来てもらえるかと言われた。

「上司には説明しておくから、行ってこい」

追っ払われるように人事部長に言われ、私も駒木さんと一緒に警察署へ行った。

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