パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
『花夜乃さん、よかったら今から出てこない?
夕ごはん食べに行こうよ』

「あー……」

外を見たらすでに、暗くなり始めていた。
夕食を作る気力なんてないし、そうなると外に食べに行かないといけないのもわかる。
でも。

「……外に出たくない」

こんなことを言うと、怒られるだろうか。
しかしそれくらい、なにもしたくなかった。

『わかった。
なにか買って帰るよ』

電話の向こうでため息をついた彼は、呆れているようでも、面白がっているようでもあった。

「ただいまー」

ちょうど観ていた映画が終わったタイミングで、駒木さんが帰ってきた。

「……おかえりなさい」

「あー、あー、花夜乃さん、髪の毛ぐちゃぐちゃだよ」

起きてからなにもしていない私の髪を、駒木さんが手ぐしで整えてくれる。

「パジャマのままだし。
今日は一日、なにしてたの?」

普通なら怒るんだろうが、彼はくすくすとおかしそうに笑いながら、買ってきたものを私の前に並べた。

「その様子だとまともに食べてないんでしょ?
先に食べてていいよ。
僕は着替えてくるね」

ネクタイを緩めながら彼が寝室へ消えていく。
言われるとおり、お腹は空いていた。
しかし、〝食事をする〟という行為ですら、面倒臭い。

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