パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「エ、エビチリ……」

こういう高級中華で、普通のメニューしか出てこない自分が悲しい。
しかし一般中華でもエビチリはお高いので、滅多に食べないのだ。

「食べられないものはあるかい?
ピータンとか」

「ピータンは食べたことがないのでわからないですね……」

「わかった」

そのままメニューを見て駒木さんは少し考えたあと、顔を上げた。

「前菜にアワビの冷菜、スープは上海蟹のフカヒレスープ、あとはエビチリと和牛のピリ辛煮込み、それにデザート盛り合わせでいいかな」

「はい、大丈夫です」

凄い、私だったら適当に頼んじゃいそうだけれど、ちゃんとコースになっている。
私の同意がもらえ、駒木さんはすぐに注文した。

「さて、マイ・エンジェル。
食事の前にこれにサインをもらおうか」

と、駒木さんがテーブルの上に広げたのは婚姻届だった。
いや、駒木さんのお宅にお泊まりした日、こっそり持ち帰って処分しましたが?

「えっと……」

複雑な気分で目の前に置かれるそれを見つめる。

「前のはなぜかなくなったからね、新しく書いてきたんだ」

「はぁ……」

今回もきっちり保証人の欄まで埋まっているが、彼らはまた書いてくれと言われてどう思ったんだろうか。
って、ひとりは東本くんじゃない。
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