パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「そうだよー。
花夜乃さんのお気に召さなかったみたいだから、新しいのを準備してきたよ。
それとも、これも気に入らない?」

みるみる不安そうに、彼の顔が曇っていく。

「気に入らないのならまた新しいのを準備するし、……そうだ!」

俯きかけていた駒木さんの顔が、勢いよく上がる。

「一緒に選びに行こう!」

さぞ名案だといった感じだが、そうではないのだ。

「えーっと。
指環はもういいです……」

なるべく断言は避け、新しい指環を買おうとするのを阻止すべく努力をする。
だいたい、婚約指環をこんなにぽんぽん買おうとする人がどこにいる?
私が知らないだけで最近は、ダイヤってかなりリーズナブルとか?
それとも、高級官僚っていっても公務員なのに、超高給をもらっているんだろうか。
だとしたら、私たちの血税を……とか、文句を言いたくなる。

「よかった。
じゃあここに、サインして?」

口角を美しくつり上げ、にっこりと笑って再びペンを差し出されたところで、受け取れるわけがない。

「おまたせしました」

そのタイミングで、前菜が出てくる。
慌てて駒木さんは婚姻届を片付けた。

「この話はまた、食事が終わってからだね」

< 38 / 219 >

この作品をシェア

pagetop