パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「今忙しいのに……」

文句を言いつつ男はスーツの内ポケットから携帯を取り出して、出た。

「なに、東本(ひがしもと)くん。
今から婚姻届を出しに行くところなんだから、邪魔しないでほしいな」

きっと電話の相手が私と同じく普通の人ならば、彼がなにを言っているのか頭を悩ませていることだろう。

「なんでどいつもこいつも、僕が天使と結ばれるのを邪魔してくるかな。
そんなヤツは即逮捕で極刑だよ」

なんだか物騒なことを言いながら男は足を踏み出している。

「報告はそちらへ向かいながら聞くよ。
そっちのほうが効率いいだろ?
んで、なんだって?」

足の長い彼が、しかも足早に歩いていくので、あっという間に距離ができた。
さらに急いでいるうえに話に集中しているのか、こちらをちっとも振り返らない。
すぐにその姿すら見えなくなった。

「なん、だったんだろ……」

怒濤の嵐が唐突に去っていき、一気に気が抜ける。

「……帰ろう」

もう散歩などどうでもよくなり、とぼとぼと家に帰る。
いったい、あの人はなんだったんだろう。
散々人を振り回しておいて、なんの説明もなくさっさと私を置いて去っていくなんて、わけがわからない。
しかも、手錠をかけられそうになったし。

「あー、もー、イラッとする!」

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