パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
薔薇の花束もだが、婚約指環だってそうだ。
わざわざ、買い直してくるなんて。

「んー、僕なりの誠意だよ。
だってあの日、スーツ姿でプロポーズされたのが嫌だったんだよね?」

何度か瞬きし、きょとんとした顔で彼は私を見ているが、どうしてそんな結論になる?
どうも、この人は少し……いやかなり、一般常識からズレているようだ。

「……別にスーツだから嫌だったわけじゃないですよ」

私の口から物憂げなため息が落ちていく。
どうして、知らない人からいきなりプロポーズされたのが怖かったという結論にならない?

「そうなんだ」

「はい」

駒木さんは初めて知ったような顔をしている。

「次からはタキシード、やめてもらえないですかね……。
できれば、花束も」

とにかくあの格好は目立ちすぎるのだ。
待ち伏せされるなら、スーツのほうがマシだ。

「じゃあ、僕はどうやって誠意をみせればいんだい?」

そんなことは自分で考えてくれと口から出かかったが、かろうじて飲み込んだ。
それに、いくら誠意をみせられようと、彼と結婚する気などない。

「フツーにデートに誘ってください、フツーに。
誠意は態度でお願いします」

「また、デートに誘っていいんだ!」

言質は取ったとばかりにぱーっと駒木さんの顔が輝く。
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