パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
瞬間、自分の失言に気づいたが、もう遅い。

「あー、そうですね……。
食事くらいなら」

「よかった」

笑顔を作り、彼の顔を見る。
駒木さんは嬉しくて堪らないのか、にこにこ笑っていた。
それがなんか人懐っこい大型犬に見えるんだけれど、……気のせい、かな。
でも、ふさふさ振っている尻尾の幻が見えるんだよねー。
たぶん、犬だとしたら長毛種だ。

それに、駒木さんとの食事は嫌じゃなかった。
私の話を真剣に聞き、愚痴も付き合ってくれる。
アドバイスはするが、無理強いはしない。
そういうところが悪くないと思っている自分がいる。

「でも、結婚の話はなしですよ、なしです」

「えー」

不満げに唇を尖らせる駒木さんがおかしくて、つい笑ってしまう。

「そうだ、三ヶ月付き合って、私を本気にさせられたら、結婚してあげますよ」

こんなことを言うなんて、酔っているなと思う。
そろそろお酒はやめないとな。

「ほんとに?」

「……え?」

グラスを口に運びかけたまま、固まった。
じっと私を見つめる駒木さんに、さっきまでの緩い空気はない。

「花夜乃さんを本気にさせたら、僕と結婚してくれる?」

「そう、です、ね……」

もういまさら、前言撤回なんてできない。
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