パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「あの、寒いんですけど」

もう五月になるとはいえ、夜は冷える。

「ああそうだね、ごめん」

にっこりと笑い、彼はようやく窓を閉めた。

「なにをやってたんですか」

「んー、花夜乃さんに危険がないか確認」

「はぁ」

危険って、いったいなんの?

「ここのマンションは、普通よりはセキュリティがしっかりしているみたいで、ちょっと安心したよ」

「そうですか」

そういうマンションだから、少し無理をしてここを借りている。
だから、危険なんてないと思うんだけれど?

「じゃあ、僕は帰るよ。
あ、戸締まりはしっかりね」

怪訝そうな私を残し、彼はすたすた歩いて玄関で靴を履いている。

「わかりました。
今日はありがとうございました」

私も慌てて彼を追い、お礼を言った。

「僕のほうこそ、結婚してくれるって言ってくれてありがとう」

ふにゃんと嬉しそうに駒木さんが笑う。

「あ、いや、私を本気にさせられたら、ですが」

「僕は絶対に花夜乃さんを本気にさせるから、心配しなくていいよ」

器用に私に片目をつぶってみせ、投げキッスをして彼は帰っていった。

「……変な人」

でも、憎めない、不思議な人だ。



「花夜乃さん!」

「うわっ!」

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