パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「お疲れ様」

手品のように、目の前に一輪の薔薇の花が出てきて、驚いた。

「どうやったんですか、今の!」

大興奮で薔薇を受け取った。
前の百本は困るが、これくらいなら嬉しい。

「んー、秘密だよ」

悪戯っぽく笑い、さりげなく私の腰に手を回して誘導する。
近くに待機してあったタクシーに、彼は私を乗せた。

「どこに連れていってくれるんですか」

「いいところ」

彼はなにか企んでいるのか、ニヤニヤ笑ってそれ以上、教えてくれなかった。

タクシーが止まったのは、老舗高級ホテルだった。

……ここで、食事なのかな。

金曜日もホテルに入っているレストランだったので、戸惑いはない。
……けれど。

「……え?」

駒木さんが私を連れてきたのは客室、しかもスイートルームだった。

「えっと……」

「今日はここでお泊まりだよー」

彼はサプライズが成功したと思っているのか、得意顔だ。

……もしかして、そっちの意味に取られた?

「あのー、あの〝慰めて〟は、本当に文字どおりの意味で、そういう意味は……」

とりあえず誤解を解かねばと説明をする。

「わかってるよー」

ソファーに座った彼がちょいちょいと手招きをするので、その隣に座った。

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