パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
こんな見た目のせいで男性から人形のように可愛いと、すぐに目をかけられるのが悩みだった。
あと、身体もちょっと弱くて風邪を引きやすいのも。

パッキンを開けて見本をてきぱきとセットしていく。
今回の見本は新商品の、リングが邪魔にならないバインダーノートだ。
私は大手文具メーカーの、営業部で働いている。

できあがった見本を抱え、会議室を出て営業社員に配って回る。

「ありがとう、かやちゃん」

ただの同じ職場の男性に、鼻の下をだらしなく伸ばしてあだ名で呼ばれても、危険を感じるだけだ。
でも、そうは思わない人もいるらしく。

「篠永さん」

見本を配り終えたところで、私より少しばかり年上の女性社員、森田(もりた)さんから呼ばれた。

「これ」

ドン!とA5サイズコピー用紙五パック入りの箱が、目の前に置かれる。
中身はコピー用紙ではなく、書類が詰まっているのは知っていた。

「整理、お願い」

にたり、と彼女の口端が醜くつり上がる。

「……それは私の仕事ではないですが」

無駄だとわかっていても、一応聞いてみた。
書類の整理は派遣さんの仕事だ。
それを、私に頼む理由がわからない。

「今日、中田(なかた)さん、休みなの」

派遣の中田さんが休みなのは知っている。
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