パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
毎回、駒木さんが私をエンジェルと呼ぶのが大袈裟だと思っていた。
私はそんな、高尚な人間ではない。

「それじゃあ、僕のにゃんこになるかい?」

「え?」

急に彼の声が真剣なものに代わり、思わず目を開いていた。
じっと見つめる、眼鏡の奥の目は私を試している。

「僕のにゃんこになって、僕に飼われるかい?
仕事も辞めて、ずっと家の中で僕に可愛がられて生活する。
どう?」

「仕事を、辞める……」

それはとても魅力的な提案に思えた。
あんな、私をちっとも理解してくれない職場なんて辞めて、ただ駒木さんに可愛がられて暮らす。
それは……。

「悪くない、ですね」

にぱっと笑ったら、駒木さんも同じように笑った。

「だろ?」

「でも」

起き上がり、真っ直ぐに彼と視線をあわせる。

「私は、私の力でどこまでできるか試してみたいんです。
だから、あんな嫌がらせに屈しない」

そうだ、だから今まで、仕事を辞めないで頑張ってきた。
ここで逃げだしたら、全部が無駄になるじゃないか。

「そうか」

落ちかかる髪を払うように私の頬を撫でた駒木さんは、少し淋しそうに見えた。

「僕はそういう花夜乃さんが好きだから、応援するよ」

しかし、今度微笑んだ彼は、嬉しそうでもあった。

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