パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
駒木さんは私に、先にお風呂に入らせてくれた。

「仕上げだよ」

「うわーっ、いいにおーい!」

一緒に浴室へきた彼が、浴槽の中へパールのようなものをひとつかみくらい入れて混ぜる。
お湯は乳白色になり、ローズのいい香りが漂ってきた。

「お気に召してくれたんならよかった。
じゃあ、ごゆっくり」

私に向かって片目をつぶり、彼が出ていく。
ひとりになって服を脱ぎ、風呂に入る。
スイートルームとあってシャンプーなどのアメニティは高級ブランドで、最高だ。

「気持ちいいー」

浸かったお湯は、肌をしっとりとさせた。
さらにいい匂いで気持ちもリラックスする。

……そういえば駒木さん、私が落ち込んでる理由、全然聞かないな。
それはそれでよかった、かも。
恨みつらみを吐いてしまえば楽にはなるが、そんなことを他人に聞かせてしまったとあとで落ち込みそうだ。
聞かない代わりに私が元気になれるように、精一杯のおもてなしをしてくれる。
そういう優しいところは、好感が持てた。

「あがりましたー」

「ん、僕も入ってこようかな」

私がリビングへ行くと、駒木さんは寝室から出てきた。
なんか取り繕うように笑われたけれど、なにか隠しているのかな?
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