パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
しかし邪魔をするかのようにまた、携帯が鳴りだした。

「くそっ」

男は苛々と手を伸ばして私のバッグの中から携帯を取り出し、床に置いてナイフを叩きつけて壊した。

「邪魔するなよな」

今度こそ男は、ナイフを使って私の服を破いていく。
それに抵抗もせずただ、横たわっていた。

「なにこれ、勝負下着ってヤツ?
こうやっていつも、男を誘ってんだ?」

「ひっ」

ナイフが、肌に触れる。
そのひやりとした冷たい感触に命の危険を感じ、短く悲鳴が漏れた。
しかしかまわずに男が下着の中央を切る。
おかげで、私の胸が男の目にさらされた。

「なに、抵抗しないの?」

見せつけるかのように、男がナイフを鼻先で振る。
抵抗すれば、殺される。
少しのあいだ、我慢していればいいだけ。
そして、駒木さんに慰めてもらったらきっと、全部なかったことにできる。
そう信じて心を殺し、男のなすがままになった。

そのうち、男の手がスカートの中へと侵入してくる。

「人形みたいで面白くないんだけど。
少しくらい、反応してくんない?」

男が置いてあったナイフを握り、私は限界まで目を開いた。
我慢してもダメなんて。
イヤ、死にたくない……!

「篠永さん、篠永さん、いますか!」

大きく開いたままの目でナイフの行方を追っていたら、唐突にチャイムの音と共に呼びかける声が聞こえてきた。
応えなきゃ。
応えて、助けてもらわなきゃ。
しかしいくら叱咤したところで、凍りついてしまった身体は声を発してくれない。

< 73 / 219 >

この作品をシェア

pagetop