パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「逃がした、だって?」

「はっ、はい!」

返事をした女性警官は、酷く緊張しているように思えた。

「緊急配備して、絶対に捕まえろ」

「はっ、はい!」

「それから……」

駒木さんは女性警官とあとから来た警官たちに指示を出している。
しかしそれは私と接しているときとは違い、別人のように冷たかった。

「お待たせ、花夜乃さん」

ほんの少し前までとは違い、にぱっと人懐っこく私の顔をのぞき込んだ彼は、いつもの駒木さんだ。

「ちょっとクローゼット、開けさせてもらうねー」

ようやく私から離れた彼はクローゼットを開け、適当に服や下着を何枚か、ちょうど置いてあった紙袋に入れた。

「ごめんね、下着も勝手に触っちゃった」

まだうまく立てない私を支えて脱衣所に連れていき、駒木さんがジャケットを脱がせて持ってきた厚手のパーカーを着せる。

「これでよし、っと」

最後に、ファスナーも上まで上げてくれた。

「じゃあ、あとはよろしく」

警官たちが一斉に彼に頭を下げる。
駒木さんって、何者……?

彼に支えられて部屋を出た。
近くに停めてあった車に乗せてくれたけれど、よかったのかな。

「ああ。
事情聴取は明日にするよう、段取りつけてあるから大丈夫」

視線に気づいたのか、駒木さんが説明してくれた。
私のシートベルトまで締め、彼が車を発進させる。

「あの。
駒木さんって……」

「ん?
僕は警察官だよ。
あーあ、秘密にしておきたかったのに、とうとうバレちゃったね」

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