パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「もうあがったのかい?」

お風呂から出てきた私を見て、心配そうに眼鏡の下で駒木さんの眉が寄る。
私が長風呂なのはもう知っているし、こんなに早く出てきたらおかしいと思うだろう。

「それじゃあ、もう寝ようか」

「はい」

こんな状態じゃ眠れないだろうが、それでも横になるだけで違うかもしれない。

私を寝室に案内し、駒木さんは出ていった。
ひとりになると不安が押し寄せてくる。
駒木さんを探しに行こうかと思いベッドを降りかけたら、彼が戻ってきた。

「駒木さん」

見上げる私になにかを感じとったのか、彼が駆けるように私の傍に来てくれる。
持っていたペットボトルがその場に落ち、重い音を立てた。

「ごめん、ひとりにして」

ぎゅっと私を抱き締める彼は、後悔しているようだった。

「……大丈夫、です」

それに気づき、強がってみせる。

「無理、しなくていいから」

そっと彼の指が私の目尻を撫でる。
それが酷く、嬉しかった。

「よかったら、これ」

私の手を取り、駒木さんが薬のシートをのせる。

「安定剤。
気休めに過ぎないけど、少しくらい眠ったほうがいい」

落としたペットボトルを拾い、彼は私に渡してくれた。

「そうですね」

素直に、もらった薬を飲んで横になる。
駒木さんは私の枕元に座った。

「今日はずっと、傍にいてくれる?」

シャツを掴み、じっと彼を見つめる。

「うん、ずっと傍にいるから、安心していい」

彼の大きな手が私の瞼を閉じさせる。
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