パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「食欲はあるかい?」

車の中で駒木さんが聞いてくれる。

「わりと」

昨晩は食べていないし、気持ちも落ち着いたとなればお腹も空いてくる。

「わかった」

と、駒木さんが連れてきてくれたのは、お洒落なカフェだった。

「ここは焼きたてのパンが食べられるんだ。
サラダもいろいろ選べるしね」

渡してくれたメニューを開く。
私がたまに土日、贅沢してモーニングを食べに行くくらいの値段で、彼が連れてきてくれるお店としてはリーズナブルだ。

がっつり目にローストチキンのサラダと、美味しそうなデニッシュを選ぶ。
飲み物はカフェオレにした。
少しして、頼んだものが届く。
美味しそうな料理を見た途端、お腹がぐーっと音を立てた。

「あ……。
すみません」

恥ずかしくてあっという間に顔が熱くなる。

「いや。
それだけ食欲が出てきたんなら、よかったよ」

少し嬉しそうに駒木さんが笑い、まだ熱を持つ顔でカップを口に運んだ。

食事を終えて車を預けた駐車場に戻ってくる。

「花夜乃さん、今日は仕事を休むよね?」

シートに座ってすぐに、駒木さんから尋ねられた。

「そうですね……」

これから、事情聴取を受けるのだとは聞いている。
半日もあれば終わるとは駒木さんは言っていたし、それなら午後から出勤できる。
でも……。

「……あの男の人は捕まったんですか」

まるで、私を知っているような口ぶりだった。
落ち着いて考えると、〝盗人〟ってコンペの件しか思い当たらない。
だったら、……同じ会社の人?
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