パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「ドアを開けたら……あの男が、部屋の中に、立って、いて。
それで……」

私の声は酷く小さい上に、震えていた。
つっかえつっかえの私の声を聞き逃しまいと、時折質問をする以外は、女性警官も駒木さんも黙って聞いている。

「そ、それ、で……」

あのときの恐怖を思い出し、心臓がばくばくと恐ろしく速く鼓動した。
目の前がチカチカして、頭がくらくらする。

「花夜乃さん、大丈夫。
僕がここにいるよ」

「……駒木……さん……?」

抱き締められ、優しく背中をぽんぽんとされて、のろのろと顔を上げる。
戻ってきた視界の中に駒木さんの顔を認め、身体から力を抜いた。

「一度、休憩にしよう。
……いいよな?」

「は、はいっ!」

駒木さんに視線を送られ、弾かれるように女性警官は立ち上がった。

「おいで」

私の手を引いて、駒木さんは勝手知った感じで警察署内を進んでいく。

「ほら、どれがいい?」

たどり着いた先にあったのは、自販機コーナーだった。
しかも、駒木さんが立っているのはフルーツ牛乳などのパック自販機の前だ。

「疲れているときは甘いものがいいよ。
いちごオレがいいかな」

「はい、それで」

すぐにお金を入れ、彼がそれを買ってくれる。
促され、近くのベンチソファーに座った。

「はい」

「ありがとうございます」

いちごオレを受け取り、ストローを挿して飲む。
甘ったるいそれが、私を癒やしてくれた。

「花夜乃さんはつらいのに、頑張って話して偉いね」

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