パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
偉い偉いと駒木さんが私の頭を撫でてくれる。
普通なら子供扱いと怒るところだが、今はそれが嬉しい。

「ありがとうございます」

「偉い花夜乃さんにはご褒美が必要だから、お昼はどこか美味しいところに食べに行こう」

眼鏡の下で目尻を下げ、にこっと彼が笑いかける。

「……嬉しいです」

甘えるように彼に自分の肩を預けた。

再開したあとも、いろいろ聞かれた。
私が言葉に詰まるたび、女性警官は待ってくれ、駒木さんは手を握ったり背中をさすったりして、私の恐怖を和らげてくれた。

「あの人、私の知っている人かもしれないです」

事情聴取で話しながら、やはりその疑惑が深まっていく。
盗人なんて恨まれていそうなのは、コンペの件しか思いつかない。
それに森田さんだって、「人から聞いた」と言っていたと聞いた。
それが、犯人なのでは?
思い当たる話を女性警官にする。
駒木さんは黙って、私の話を聞いていた。

「ようするに、花夜乃さんにとって会社は危険な場所ってことか……」

考えながら駒木さんがぼそっとこぼした言葉は、私には恐怖しかなかった。

私が少しずつしか話せないので時間は思いの外かかり、終わったときにはお昼を回っていた。

「ご協力、ありがとうございました。
絶対に犯人を捕まえます」

「……よろしくお願いします」

頭を下げる女性警官に、私も頭を下げ返す。
最後まで彼女は親身に、私の話を聞いてくれた。
あのときの警官とは違う。
だから、つらい体験だけれど、話せたんだと思う。

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