パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「ん」

「ありがとう」

差し出されたお茶を、ありがたく受け取る。
彼は持ってきたノートパソコンを、私と向かいあって広げた。

「大変だったな、篠永。
いや、大変って言葉だけで済まされないけど」

「……ありがとう」

彼のそういう気遣いは相変わらずで、少し嬉しくなる。

「なにかあったら言ってくれ。
俺でよかったら力になるし。
てか、あの駒木警視がついてるならあれか」

自嘲するかのように彼が笑う。

「……うん。
駒木さんはよくしてくれるよ」

お試しで付き合っているだけなのに、こんなにしてもらって本当にいいのか、申し訳なくなる。
でも、今は彼に甘えるしかできない。

「ところで、さ。
駒木さんって何者?」

遅いお昼ごはんを食べながら、東本くんと話す。

「は?」

なにを言われているのかわからないといったふうに一瞬、目を大きく見開き、東本くんは何度か瞬きをした。

「警視? とか呼ばれてたし、こんな立派な部屋でお仕事してるなんて、警察の偉い人なんだろーなーっていうのはわかるんだけど、それ以外は知らなくて……」

はぁーっと大きなため息が東本くんの口から落ちていったが、なんでだろうね。

「なあ」

「はいっ」

彼の声は怒っているようで、つい姿勢を正してしまう。

「相手が何者かも知らないのに、結婚するのか?」

「あー、そーだねー……」

東本くんの問いはもっともすぎて、返す言葉がない。
それにずっと公務員で押し切られて、言葉巧みに丸め込まれていた。

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