パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「……暇」
携帯があれば時間が潰せるが、壊されたのでない。
ああ、そうか。
携帯も買わなきゃいけないんだ……。
あれ、春に機種変して分割払い契約したばっかりだったんだよね……。
「あー、なにもないのは暇だよな。
ちょっと待ってて」
東本くんが立ち上がる。
そのまま、さっきのドアから出ていこうとしたところで、声をかけた。
「あの。
……一緒に、とか無理だよね?」
「あー……」
長く発し少し考えたあと、東本くんは私を手招きした。
傍に行くとドアを開ける。
中では年配の男性と、同じくらいの年の女性警官が机に向かっていた。
私たちに気づき、彼らが顔を上げる。
「例の、篠永花夜乃さん」
「ああ!
こんにちはー」
最初は不審者を見るような感じだったのに、東本くんの紹介で合点がいったとばかりに急ににこやかに挨拶をされた。
それにしても〝例の〟って、ここでの私はどういう認識なんだ?
「ここ、参事官付きの事務室になってるんだ。
ここを通らないとこのドアからは入れない。
そして彼女は柔道黒帯だし、あのおじさんもああ見えてけっこう戦える。
だから、心配しなくていい」
「はい、大丈夫ですよー」
私を安心させるように、女性が笑ってみせる。
きっと東本くんは、私の不安をわかってくれたんだ。
変わったね、東本くん。
高校生のときとは、違うんだね。
「なあ。
なんか暇つぶしできる雑誌とか持ってない?」
「あー、私、そういうのは電子で済ませちゃうんで。
ちょっと待ててください」